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朝焼けの湿気た空気が空色を染める時間。 そうそうに準備を済ませた僕は、 通学路の途上で踏み切りに捕まり、 電車が通りすぎるのを待っているところだった。 そんなとき背後から誰かが駆けて来て、 踏み切りの遮断機を越え線路の中を駆けていった。 僕と同じ制服。 そう思った瞬間、電車がもの凄いスピードで 通りすぎ、彼の姿をかき消した。 激しい突風に埋没(まいぼつ)してかき消える彼の陰影(いんえい)。 遅れてやって来た轟音の中、 電車はスピードを変えず僕の前を通りすぎて行く。 引かれた!? 最悪の予想の中、僕はただ呆然(ぼうぜん)と、 電車が通りすぎるのを待っていた。 頬を刺す突風がやけに冷たく、 低血圧の僕の目を目覚させた。 リアルに冴え渡る頭。 轟音が通りすぎると共に辺りは再びしずけさに 包まれていた。 まるで何事もなかったように辺りは朝日に照らされ日常の風景が戻っていた。 そこには惨憺(さんたん)たる血飛沫(ちしぶき)も、 肉の残骸(ざんがい)もなかった。 ただ普段と変わらない日常がそこにはあった。 それがかえって不気味で恐ろしかった。 踏み切りの先で学生が背を向け立っていた。 僕と同じ制服。 無事だったのか!? 安堵(あんど)と共に脱力感が全身を包んだ。 そんな僕の内心のドキドキを嘲笑(あざわら)うように彼は、 何事もなかったように一瞬こちらに振り向いた。 その顔には見覚えがあった。 近すぎてすぐに思いだせない顔。 その顔は僕自身だった。 彼は僕が見えてないようにすぐに背を向け、 踏み切りの向こうに駆けて行った。 一瞬、見間違えかと思えるほどに現実感を(ともな)わない 後ろ姿だった。 僕は遮断機が上がるのを待たず線路をくぐると、 彼の後を追い始めた。 突然遮断機をくぐり駆け出した僕を 周りで待っていた観衆が何事かと見つめていた。 僕は構わず姿が見えなくなった彼の足取りを 追いかけ続けた。 同じ制服を着ていると言うことは、 行く場所は決まっている。 そのまま学校を目指しかけ続けた。 そのまま僕は彼に追い付く事なく学校に到着していた。 早朝の学校は閑散として人の気配がない。 そんな中、校舎の脱靴場(だっかじょう)に駆け込む人影が見えた。 僕はそのままその後を追い駆け出した。 昇降口を抜けた所で彼の姿は消えていた。
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