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夕暮れに真っ赤に染まった教室で、
彼女は卓上に座り僕を見つめていた。
長い髪をなびかせこちらを見つめる理系の美女。
閑散とした静けさが彼女の容姿をより鮮明に、
浮きたたせている。
彼女の名は、霧島 凛火。
僕の手には彼女の携帯が握られていた。
赤と青。
つがいのイルカのストラップが揺れていた。
もう片方の手には差出人不明の手紙。
放課後の教室で待ってるとだけ書かれた手紙。
その手紙の差出人本人の携帯だ。
その携帯に書かれたメールを見て、
僕は再び彼女にたずねた。
「いたずらとかでなく?」
「本当よ。
そこに書かれた事は必ずおこる。
例えばそうね、もうすぐ地震速報が入るわ」
彼女がそう言い終わる前に緊急ニュース速報が
アラームと共に携帯に映し出された。
緊急ニュース速報。
今日4時38分頃千葉県で震度3の地震を観測。
それはメールにあった地震速報の結果と同じだった。
そしてそのメールには、
それを見た僕が彼女の話を信じると書いてあった 。
「本当にこのメールが未来を予見しているとして、どうして僕なの?
他にも僕より喧嘩の強い人はいっぱいいるでしょ」
彼女は真剣に僕を見つめ断言した。
「私を救えるのはあなただけよ。
白木 一希くん」
なぜ彼女はそう断言できるのか?
それも予言なのだろうか?
「確かに喧嘩なら力の強さで決まるわね。
でもこれは殺しあい。
相手を殺さないと言う前提の喧嘩とは根本的に
違うのよ。
殺しあいでは、
喧嘩の強さだけで生き残る事は出来ないの。
そしてあなたにはその強さがあるのよ。
ただそれだけの事よ」
少しがっかりする。
あなたでないとダメなのとか、
あなたが好きなの、あなたに守られたいのとかを
期待していた訳じゃないが、
そうはっきり言われると少しがっかりする。
「それに一希」
僕の心音がドクンと大きく脈打った。
「1つの希望と書いて一希くん。
あなたは私の最後の希望なのよ」
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