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アイビーから不安な気持ちをぶつけられることが多くなったが、無理もないなと自覚している部分はある。
俺が初めて彼女を抱いたのは、たった1度だけ。それも相手から「私のことが好きだというなら証明してよ」と喧嘩の途中で言われ、やけになったから。
素面じゃどうしても無理だったから、酒やサプリメントを大量に飲んで。今思えば、もっと優しくすべきだった。
それからというものの、彼女はなんとなく気づいていたのだと思う。
「書いてあったから」が口癖になりだしていた。
恋人が自分のことをどう思っているか仕草で分かるというサイトを引用し、自分は彼氏から愛されていないと言う。
それでもアイビーは俺から離れようとしない。
感情が高ぶって言い合いになっても。「ごめん。もう泣かないから」、これも彼女の口癖。
泣き崩れるアイビーを抱きしめれば全てリセットされ、振り出しに戻る。これをひたすら繰り返す。
恋人であるためには、俺は淡々と嘘を重ねなければいけなくて、彼女は黙々と嘘を信じ続けなければならなかった。
サクラさんから直接会って話したいと連絡があった時、後ろめたさはなかった。馨仁はおろか誰にも相談できずにいたから、むしろサクラさんに全てを吐き出だせるのではないかと思った。
だけど、所詮本名を知らない同士、心を許すことはできなかった。
寒い日の空が群青色に見えるのは、空気が澄んでいるからだったかな。星々はいつもより白くて眩い。
ポケットに手を入れながら歩いていると、デバイスの振動に気づく。目の前に出た名前は、馨仁だった。
まさか、彼から連絡をしてくれるなんて。本当は飛び跳ねて喜びたいとこなのだが、妙な胸騒ぎがした。
俺は電話に出る。
「もしもし、け…えっと、ネイサンだよね?どうかした?」
「シュン…僕…どうしよう。もうダメだ、ごめん。何て言えばいいか…」
かなり動揺している。
「落ち着いて。今どこにいる?」
「へ、部屋にいる…けど…。あぁ、なんてことをしてしまったんだ…」
俺は住所を聞き出そうとした。しかし、パニック状態に陥っていてうまく聞き取れない。
「とにかく、今いる場所を教えてくれ!助けたくても、何もできない」
「あぁ、うん…。そ、そうだよね…ごめん…」
「大丈夫、ゆっくりでいいよ」
「その前に…シュン…。僕は、最低のことをしてしまったんだ。君を…君の人生を狂わせてしまうかも…」
「平気だよ!いつも助け合ってきたじゃないか」
何を大袈裟な、とこの時は思っていた。
「シュン…。聞いて…、僕…。ひ、人を殺した。パパラチアさんを、殺したんだ」
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