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彼はドリブルをしながら走り、ボールを掲げ、シュートした。
ボールは綺麗な弧を描き、ゴールに吸い込まれた。
「あれ?」
床に転がっているボールを拾おうとして、彼は入り口に突っ立っている私に気が付いた。
「高柳じゃん?何してるの?」
長いことここでバスケをしていたのだろうか。彼の息はあがっていた。
彼は不思議そうに私を下から上まで見た。
「なんで制服?」
そう言う彼は私服だった。
「別に。着たかったから、着てるだけ」
「ふうん」
彼は手の中でボールを転がすと、「そうだ」と言って、いきなりボールを私に向かって投げた。
思わず反射で受け取ると、彼は私に笑いかけた。
「ちょうどいいや。お前ちょっと付き合え」
「えっ」
「ほら、昔は一緒にやっただろ」
そう言ってゴール下まで走ると、私を振り返り手招いた。
「ほら!早く!」
要は私にバスケに付き合えと言いたいらしい。
「私、制服なんですけど」
文句を言いつつ、私はドリブルをした。すると、手に当たるボールの感触がとても懐かしくて、私は気持ちが沸き立つのを感じた。
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