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「ほらこれ、口つけてないから飲めよ」
そう言って用意のいいことにペットボトルの水を二つ持ち片方を私に渡した。
「なんでバスケしてたの?」
水を飲みながら、私は尋ねた。
「なんか……最後だし」
少し口籠りながら野本はそう言った。死ぬ前にバスケがしたくなった。そういうことだろう。
「お前は?なんで学校にいたんだ?」
「私は毎日来てるし」
そう答えると、野本はきょとんとした顔をした。
「は?でも誰もいないだろ?」
「うん。いない」
頷いて、水を飲む。そんな私を見て、野本はそっかとつぶやいた。
二人で体育館の外に出る。
外はすっかり夕焼け空で、茜色の空がとてもきれいだった。
その空を見上げ、誰もいないグラウンドの真ん中でまるでグラウンドを独り占めするかのように野本は両腕を伸ばした。
「俺、今日学校来てよかった。お前とバスケできたしな!」
そう言って野本は明るく笑って私を振り返る。私はそんな彼に言いたかった。私も、と。
けれど言いかけたとき、私は彼の持つ荷物に目を留めた。
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