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その帽子を持って、中学生が私のところに一歩一歩近ずいて来るその姿は、まるで王子様のよう。
中学生が、私の目の前まで足を止め帽子を頭に、かぶせ微笑かける。
「これっ、キミのだろう?」
ガラスの靴じゃないけど私が、憧れていたシーンのような気分になった。
中学生のその笑顔に、小さな私の心臓がドキドキと早く鼓動する。
身体が、かぁーっと熱を帯びたように火照りだし、中学生の顔が見れずに、目線を逸らす。
「うっ・・・うん。ありが・・・とう」
私は、その王子に恋をした。
王子の制服の首元に、桜の形をした校章が目に入った。
どうやら、王子は有名な私立の中高一貫校に、通っている事を知った。
何としてでも、王子と同じ学校に行きたかった私は、母にお願いする。
だけど、母子家庭だったウチは、そんなお金の余裕がある訳もなく。
なかなか、母からは許してはくれなかった。でも、諦めず毎日根気よく頼み続け、私の熱意に負けた母は、許してくれた。
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