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ビデオカメラ
「準備いい?」
「なんか緊張する。目の前にカメラって。」
「他人に見せたりするもんじゃないから。」
「そうだけど……。」
「気が散るなら部屋から出てようか?」
「だめ!ここにいて!」
「んじゃ。ちゃっちゃっとやっちゃおう。」
REC ON。
「あっ……えっと。……なんだっけ?」
「自己紹介。挨拶。気楽に。」
「そう……自分に自己紹介……。変な感じ。」
「そう、もう一人の自分に……。」
昨日の続き。
「きみは昨日会ったな。」
病室でテレビを見ていた時だとすぐに察した。
目つきが一緒だったのだ。
あの時の冷たい眼差しと。
顔は妻なのに、口調と目つき、表情が違うだけでまるで別人である。
「昨日はまだうまく話せなくてな。テレビで勉強してたんだ。」
演技?
なんのために?
妻がそんなことをするとは思えないし、する必要性も思いつかない。
「今この場に出てきた理由は2つ。一つ目は覚醒状態からの交代の実験。二つ目は協力者に現状の把握を促すためだ。」
実験?協力者?
「私は私と話し合いをしたい。そこできみにビデオカメラというものを用意してもらいたい。」
話し合い?ビデオカメラ?
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