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僕だけが取り残された部屋で、一人愛しい妹の名を呟く。高校生の時に行った運命の日……告白した日が走馬灯のように流れる。揺れる髪、揺れる海、揺れる想い。あの時の輝いた青子の笑顔が、瞼の裏に今もこびりついている。
覚束ない足取りでリビングに向かう。彼女はいない。視線を玄関に向けると、彼女のお気に入りのミュールが無くなっていた。出掛けたのか。こんな早く……。
憔悴していた僕は、ふらふらと腰を下ろす。寂しいのか、悲しいのか、それすらも分からない。今言えることは、僕は立ち止まったままで、君は進み始めた。それだけ――。
僕達は双子。血の繋がった兄妹。本来ならば近親同士で付き合うなんて絶対に許されない。……だからこそ惹かれたのかもしれない。でもそれってきっと、僕が嫌う"その場のテンション"と対して相違ないんだろうと思った。
神様が怒ったんだ。目に余る僕達の行き過ぎた行為に、天の裁きが。
もうすぐ夏が終わる。同時に僕達の繋がりも切れる。時を止めるまで後、数十分――。
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