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「でもね、やっぱり違うなって。……あ!次の講義の課題やった?タイミング逃して本借りられなくて、できてないところあるんだよね。……見せて欲しいなぁ。」
フォークを唇に挟みながらわざとらしくちらちら視線を送ってきた。少し上目遣いで。こういう仕草は本当にやめてほしい。弱いんだよ、僕。
「いいけどさ。バイトも程々にしないと単位落とすぞ?最近シフト詰め込み過ぎだと思う。」
「だってお金はあった方がいいじゃない。可愛い服欲しいし、美術館行きたいし、美味しい物食べたいもん。」
「はいはい。そればっかりだなお前は。それよりさ――」
僕の言葉は昼休み開始のチャイムにかき消された。大事なことはいつも伝わりにくい。それとも、まだその時じゃないという神様の啓示?
何だか話をはぐらかされたような気かもするが、目眩がするほどの喧騒に僕は気持ちが萎えた。二時限目を終えた学生たちが一斉に食堂に集い、バーゲンセール状態。
大事な話をできる雰囲気ではなかったが、僕も青子もお互いを探るような目をしている。何かのタイミングを見計らっているのは青子も同じようだった。
「ただいまー。」
誰もいない部屋に向かって言うと、寂しさが壁に反響して悲しくなった。どうやらまだ帰ってきていなようだ。
「はぁ……。何だかな。」
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