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『俺は小学生の時から密かに彼女が好きでした。でも言えなかったんです。それから高校、大学とバラバラになって……。偶然彼女を見かけたとき、ドキドキしましたよ!それで、海の楽しい気分になっている今なら言えると思いまして。告白しました。』
『へぇー!海で告白なんてロマンチックですね!』
『なんか海だと何でも綺麗に思えるというか……、ねぇ?皆浮足立ってるからその雰囲気に飲まれるというか。』
『俺も海じゃなきゃ言えなかったかもなぁ。』
『確かに夏の海なんてドキドキしちゃいますよね!告白したくなるのもわかる気がします。では、そんなお二人の――』
徐に僕はテレビを消した。イライラしているのが自分でも分かる。今僕は非常に不愉快な気分になっていた。
その時の気分で告白したのか。覚悟を決めて伝えるのではなく。気持ちではなくて場所の問題だなんて。そんなの、絶対に……。
「たっだいまー。……あれ?蒼衣?」
飛びかけていた意識を突如響いてきた声に引き戻される。時計の針は午後九時を指していた。
「……この匂い。もしかして、カレー?!」
「ああ。お前好きだろ?夏こそカレー食べなきゃな。」
「嬉しい!疲れた体に染みるわぁ……。」
子供みたいな満面の笑顔で、早く着替えてくると言い残し自室へ入っていった。こういうところは昔と何も変わらない。――表面的には。
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