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突然のノックに僕は思わず飛び起きた。溶けかけていた思考が瞬時に覚醒する。
「……青衣、起きてるよね?」
「……入って来なよ。」
僕が扉の向こうにそう告げると、ガチャリと控えめにドアノブが回され、青子が入って来た。
「こんな時間にどうした?」
本当は心臓の鼓動がうるさくてたまらなかったが、必死に"普通"を装った。
「………。」
「青子……?」
冷たい静寂が、この場を包み込む。青子は扉付近に立ったまま、身動きしない。ただ、その眼は確かに蒼い月を映していた。
「……いい?一緒に寝ても。」
「え……、あぁ、うん。」
突然かけられた甘い砂糖に、僕は戸惑いを隠せなかった。静かに滑り込むように僕のヘッドに入って来た青子。……これは期待してもいいの?それとも浅はかな幻?
「急にどうしたんだよ。こんなこと……もう――」
「……なんだか無性に、蒼衣を感じたくなったの。駄目?」
「そんなこと……、ない、けど。」
青い眼をした青子は僕の方に顔を向け、甘美な視線を投げかける。思わず喉が鳴った。だって、目の前にこんなに美味しそうな甘いお菓子があるのだから。
「……いいの?」
「……聞かないでよ。言わなくても感じてよ。」
「青子……夜明けはまだ先だよ。」
「分かってる。」
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