Between The Lines

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Between The Lines

「好きなんだ」 「私も…好きだよ」  あの日の情景がつい昨日のことのように思えた午前零時過ぎ。僕はうだるような夏の暑さに苛立ちながら、ベッドで一人窓の月を見ていた。  一線を越えたあの日の夜も、今日みたいな純白の満月だった。空と海と月が見守る中、僕達は一つになったんだ。あの時はまだ青かった。他の世界なんて知りもしなかったし、知ろうとも思わなかった。  ふと視線を巡らすと、簡素な机に置かれた可愛らしい卓上カレンダーが目についた。8月のとある日にぽつんと着けられた赤丸。初めて唇を重ねた日から四年の月日が経っていた。  僕達は大人になった。"二十歳"という記念すべき成人の証は光速で過ぎ去って行き、大人であることをはっきり自覚しないまま大学最後の夏休みを迎えた。  「夏は夜」というフレーズを急に思い出した。夏に入ってから、どうも夜になると感傷的になってしまう。それは誓いの日が夏だったから?それとも夏の激しさの中に終わりを見たから?  焼けるような思考を振り切って、僕は目を閉じた。微かな風が窓を揺らす音に心地良さを感じて睡魔が襲う。     
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