冷たい体と熱い想い

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 愛情を込めて世話をするのに夢中になって、一緒にいると明るく温かい気持ちになれた。  俺が人間に変身した時はポックリ逝ってしまうかと思うほど驚いたけど、それでもこの子はユキなんだと、逃げずに受け入れると決めた。  大きくなって大人になって、いつか自分の元を離れると申し出されるその時まで。本物の家族に。  今までのすべての時間が幸せだった。俺とばっちゃんとをめぐり合わせてくれた神様に、そして老い先短い自分に尽くしてくれた、そばにいてくれた俺に“ありがとう”って。  あの日俺から大切な人ができたと聞いて、ホッとした。良かった。自分がいなくなっても、その人がいれば俺が寂しい思いをしなくて済むと。  手紙の最後は“今まで本当にありがとう。どうか、幸せに暮らしてください”と締めくくられていた。  涙が止まらない。今までにないスピードで走り跳んだから、体が痛い。ばっちゃんを失って、心が痛い。ズキズキ、ズキズキ、ズキズキ……  大粒の雨が俺の体も涙も流していく。寒い。あぁ、俺は今どこに行こうとしてるんだろ。  突然のことにショックだったからとはいえ、先生を置いてきちまったし。せっかく俺の手をつかんでくれたのに、俺が離してしまった。  嫌われた。絶対に怒ってる。あの時、タクシーを捕まえてでも先生と一緒に行けばよかったんだ。  なのに俺は身勝手に1人で突っ走ってさ。直也を殺そうとした時みたいに、1人じゃあ何もできないのに。俺は大事な時に誰も頼れねぇ。  ごめんなさい、先生。俺、先生に合わせる顔がねぇよ。 「…………嫌いだ……人間なんか、嫌いだ」
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