冷たい体と熱い想い

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 思わずそう呟いていた。こぼれ落ちた言葉はまるで呪詛のように俺の体を這い回り、締め付ける。苦しい。  ばっちゃんに拾われて一緒に過ごしたのも、先生に出会えたのも嬉しい。幸せだ。でも、こんなにも痛くて苦しい思いをするなら。  人間として生活していても騙されて傷つけられて苦しむんなら。俺は、人間になりたいなんて思わなきゃよかった。  野良猫時代に憧れた人間と、人間の世界。現実は醜く、汚い。 「……はぁ」  ついさっきまでは幸せでいっぱいだったのに。なんだかもう、全てが嫌になった。傘も差さず、冷たい雨に打たれながら歩き続ける俺を心配そうに見つめる人達。  今思えば、天気予報は雨だと言っていたな。だから街行く人達は皆傘を差しているし、傘を持っていないずぶ濡れの俺は笑いものか?  いつからだ?その視線が、驚きと怯えに変わったのは。すれ違いざま、俺に目を向ける人達にチラッと目を向けると、目が合うと逃げられた。  早足に俺から離れ、離れた場所からケータイを向ける。カシャッ。写メを撮られた。  天気予報を信じず傘を用意しなかった、ずぶ濡れの俺がそんなに面白いか?SNSにでもアップするんだろうが、そんなんじゃあフォロワーはつかねぇぞ。  目ざわりだ。どいつもこいつも、わざわざ足を止めて俺にケータイを向けやがる。  いくつもの目が、俺を映す。不愉快だ。あー、イライラする。  だるくて重い体に鞭打って走った。パシャンッパシャンッ!と足元に水の王冠をいくつも作って、人気のない路地に飛び込む。
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