冷たい体と熱い想い

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 いつもならすぐに戻るのに。俺の耳と尻尾は、さもそこにあるのが当然のように消える気配がない。あたふたとしていると、直也が「おいで」と手を伸ばしてくる。  瞬間俺は、身を低くして地面を蹴った。直也と俺なら俺の方が足が速い。とにかく、人気のないところを選んで隠れねぇと!  直也が俺を見つけたのが偶然だと、俺に発信機でも仕掛けてねぇことを祈って。人目を避けて低く駆ける。  走って走って。走りながら、直也がどこかで「逃がさないよ」と笑う姿を想像しちまって震える。  もう、踏んだり蹴ったりだ。今日はどんだけ走るんだよ。雨が耳の中に入って痛い。かなりの距離を走り続け、あんまり使われてなさそうなさびれた公園に飛び込んだ。  ドーム状の遊具の中に体を押し込んで、自分の体を力いっぱい抱きしめる。寒い。怖い。ガタガタ震えて歯が鳴る。  震えているのは体だけじゃねぇ。走っている間は走るのに夢中で気づかなかった。ケータイが震え続けている。  直也…………じゃねぇ。知らない番号。ピッと切る。すぐにまた鳴る。同じ番号。こんな時に間違い電話……?だったら出る必要はない。出れるかバカ。ピッと切る。やっぱりすぐに鳴る。  出て2秒で切ってやる。そう思って耳に持って行くと、確実に遊具の外まで聞こえるであろう叫び声が俺の耳を貫いた。近くにあいつがいたら即刻バレる!!  最悪の場面が頭をよぎった。けどそれ以上に、聞こえた声に俺は通話終了のボタンを押せなくなった。 『シオンッ!?俺だ!今どこにいる!?』  あぁ、ついに幻聴まで。絶体絶命のピンチ。こんな時に大好きな先生の声が聞こえるなんてやっぱり俺、もう終わっちまうのかなぁ。
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