冷たい体と熱い想い

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「せん、せ……ごめ、なさい……」  俺も先生もまだ、お互いの電話番号を知らない。電話をかけられるはずがねぇんだ。なのに、先生の声はさらに続く。 『謝るのは後でいいから!お前今、街でお前の写メが広まって大変なことになっているんだよ。どっかで隠れているんだろ?すぐに行くから、場所を――』 「みーつけた。かくれんぼにしては簡単すぎるよ、ネコヒメ様?」 「うあぁっ!!」  電話の向こうから聞こえる先生の声が幻聴じゃないと気付いた瞬間、耳に激痛が走った。耳をつかまれ、ドーム状の遊具から力任せに引っ張り出される。  俺の手からケータイが滑り落ち、グシャッガシャッ!と踏みつけられた。 「痛い?血が通ってるし、やっぱり本物なんだねぇ。すごいなぁ。この尻尾も硬くて、泥で汚れてるねぇ。せっかくきれいな白猫なんだから、僕が綺麗に洗ってあげる、よっ!」 「がはっ!う、ぐぅっ!がっ!」 「でも君は暴れるだろうから、暴れる気もなくなるくらいに痛めつけておかないと。また引っ掻かれでもしたら嫌だからね。これはしつけだよ」  尻尾をつかんで引き倒され、すかさず強烈な足が俺の腹にめり込む。2回、3回、4回。背中も蹴り飛ばし、うつむかせると右手の平を踏みつけてグリグリ。  こいつ、人間じゃねぇ!他の商売相手はたまに暴力を振るってきたが直也は1度もなかった。なのに今は、楽しそうに足を振り上げる。  蹴られるたびに口から血の塊が飛び出し、力が抜けていく。目がかすんで、十数回目の蹴りが俺の目を閉じさせた。
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