319人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の状態を見抜いたように、あの強い眼光に射抜かれた悠一はその場で倒れ、保護された。香さんには悠一の力は効かないんだと。さすが、1000年。
全てを悟った香さんは、それから何年もかけて悠一から魅了の力を奪い取り込む。取り込まれた力はさらに強い香さんの力によって消された。
消されたというか、浄化されたというか中和されたというか。その力の強さと量に、香さんも予定以上の時間がかかったと。
「俺に名前と、生きるための知識と居場所を与えてくれた。香さんは俺の命の恩人なんだよ」
「……すげぇファンタジーな話だけどさ。ライガーってだけでそんな力が出るのか?キツネはほら、神様の使いだとかって言うじゃん?」
「ライガーは野生で生まれること自体が奇跡。そのうえ父親の“擬人化種”という特別な遺伝子が加わって、こんなことになってしまったらしい、って香さんは言っていたなぁ」
化学反応みたいなことか。神様レベルの香さんでも、悠一の魅了の力全てを取り除くことはできないのか。
だから悠一は、本性を見せるのをことごとく避けてきた。いや、何度もせがんだんだよ。ライガーなんて珍しいし、生で見たことがないから興味本位でさ。
今思えば俺、酷いことをしてたんだな。大好きなのに。悠一を傷つけるようなこと、させてたんだ。ごめん。
そういえば。もしかして、悠一がライガーの擬人化種だって明かした時、店長の顔色が変わったのって。驚きよりも恐怖におびえるような感じだった。
知っていたのかもしれないな。特別な力を持ったライガーの擬人化種がこの街にいるって。
魅了し心を奪い、意のままに操ることから“ライガー王”とまで言われている、恐ろしい擬人化種がいるって。
最初のコメントを投稿しよう!