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「悠一がライガーになって俺にじゃれついてきても、俺はいつもの俺のままでいられる。自信がある。だって、俺達は愛し合っている恋人なんだし。魅了の力だとか心を奪うとかそんなの、今さらだろ?」
コツンと額を合わせ、目を閉じる。全然怖くねぇよ。キレた悠一は凶暴で、迫力もあって怖いけどさ、力のことは怖くない。
驚いて何も言えねぇか?動かないし何も言わない悠一のアホ面でもからかってやろうと額を離して、ハッと息をのんだ。
「そ、んなこと……初めて言われた。恐ろしい、危険だって避けられていたのに…………シオン、俺……っ」
驚きのような、何とも言えない表情。ポロッと一粒の涙がこぼれ落ちた。今度は反対側から。もう1つ、もう1つ。次々と溢れてきては頬を伝う。
オッサンの泣きっ面。なんて、言えるかよ。驚いた。まさか悠一が泣くなんて。
オッサンの泣きっ面。なのに、綺麗だなって思った。濡れたまつげとか目とか、何だろうな?心からの安心というか、驚きが混じった嬉しさ?それが涙になって。
嗚咽を漏らしながら涙を流す悠一の泣き顔が、綺麗だと思った。髭面のオッサンなのに。
「んっ……シオン?何をして――」
「悠一の力は消える。悠一が魅了するのは俺だけ。悠一の力は俺が全部、食ってやる。たらふく食って、その分あんたに返す。俺からの愛として、全力で甘えてやるから覚悟しろ」
気が付いたら俺、悠一の目元を舐めていた。舌がザラザラだから痛かったら悪い。
こぼれる涙を舐めて、出てこなくなったら鼻先を擦りつける。それから悠一のいい匂いがする首元に顔をうずめて、スリスリ。
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