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「うわ、ごめんシオン。ちょっと、鼻血が……」
手で鼻を押さえる悠一の顎が、ボタボタと血で汚れた。鼻血って、中学生かよ。ほんっと情けねぇなぁ。ちょっと可愛いけど。
俺の甘え作戦、中断。俺は右目を、悠一は鼻を押さえて洗面所へ。
先に俺が目をすすいで、白目が充血するくらい洗ってようやく晴れた赤いモヤ。まだ目がかすむが、問題ねぇ。
悠一なんか、手を離した途端に洗面台が真っ赤に染まったんだぜ。思わず笑っちまった。いや、鼻から下が真っ赤すぎて。
無言でジトッと睨まれたけどさ、全然迫力ねぇ。むしろさらに笑いがこみあげてくるからやめてくれ。
「お前のせいだからなぁ、シオン。お前があんまりにも可愛いことばっかするし言うから……」
「人のせいにすんじゃねーよ、オッサン。あーあ、ケータイがあったら悠一の傑作写メを待ち受けにしてたのに。鼻血が出て鼻にティッシュ詰めてるオッサンなんて最高じゃん、クスクスクス」
「ケータイならその耳と尻尾が消えたら一緒に買いに行こう。なら、オジサンは可愛い可愛いシオンの寝顔でも待ち受けにしようっかなぁ。ニヤリ」
「いつ撮った!?い、今すぐ消せよっ!このっ……!」
鼻にティッシュを詰めた悠一がケータイを手にニヤニヤ。取り上げようとしたら手を高く上げられ、背が届かねぇ。こんな時に身長差がっ!
「うぅ……ぅにゃあっ!!フフン、ネコのジャンプ力をなめんなよ……って、あれ?」
俺は跳んだ。身を低くして、一気にジャンプ!見事に悠一の高く掲げられた手からケータイを奪うと画像を漁る。が、何もない。
「まだ撮ってないよ。そんなマジになるとは思ってなかったわ……」
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