319人が本棚に入れています
本棚に追加
/811ページ
俺、夢中になって「美味い」しかしゃべってなかったなぁ。何か話しかけてきた?すまん、覚えてないんだわ。
シオンも俺の少し後に食べ終わって、洗うのは俺が引き受けた。それくらいはやらせてほしい。シオンを家政婦にはしたくない。
とは言っても、使った調理器具はまな板と包丁と鍋とザルだけ。早い、美味い、簡単、道具が少ない。素晴らしいな。
明日は何を作ってくれるのか。今度は俺も何か一緒に作らせてほしいなぁ。共同作業とか、したくてね。
コンビニの食材だけでこのレベル。スーパーに行けばどうなる?店に出せるくらいのものができたりして。
毎日じゃなくてもいい。シオンだって大学やバイトがあるんだし、外食に出かけるのもいいなぁ。俺、車の免許を持ってないから場所は限られるけど。
俺は救いようのない極度の方向音痴だから、車を持っていたらあっという間にガソリンが減る。ということで、実は香さんから止められている。
あ、シオンが免許を取ってくれたら。金なら俺が助けてやれるし、今度持ち掛けてみよう。
シオンとの思いが通じ合ってからは世界が明るくなった、眩しいくらい。あぁしたいこうしたい、一緒に行きたい。欲がどんどん湧き出てくる。
週末のお出かけを楽しみに待っている子供か。笑えるけれど、まさにそんな感じ。
でも、シオンはどうなんだろうな。今こそは笑っているけれど。この子は育てのおばあさんを失った。
この子の胸にポッカリ空いた大きな穴は、俺に埋めることができるんだろうか?満たしてやりたい。この子の心を、体も、全て俺で満たしたい。
最初のコメントを投稿しよう!