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「……なぁ、タバコってそんなにいいもんなわけ?」
食後の一服をしていると、空になったタバコの袋をシオンが拾った。クンクンと匂いを嗅いで、顔をしかめる。
「体には毒でしかないよ。けれど、いい息抜きになる。人間の世界に馴染むように、人間らしくなるようにってなんとなく吸い始めて何となく止めれなくなってんの」
「ニコ中かよ。酒は興味あるけどさ、タバコは臭いしやだな。吸うのやめろよ。禁煙だ。今すぐ」
「え、それは無理。ちょ、ちょちょちょちょちょっ、火がついているんだから危ないって!オジサンの数少ない楽しみを奪わないで!?」
いきなり飛びついてきた。さすがに危ないって。なんか、目が据わってるし。
横暴な禁煙命令。禁煙はあの大学に勤務が決まってから何度かチャレンジしたよ。けどなぁ、だめだった。1日も禁煙できなかった自分の状態とタバコの恐ろしさを身をもって知った。
シオンお得意のネコパンチが何発も飛んでくるので、やむなく火を消す。
「お前、さてはかまってほしいんだろう?タバコ相手に嫉妬か?」
なんとなく、そんな風に見えた。自分の気持ちに正直すぎやしないか?タバコはオジサンの必需品、いわばトレードマークだろう?
なおも猫パンチを繰り出してくる暴れる手を捕まえ、引き寄せる。顔を近づけると「くせぇよ」と顔を背けられた。
匂いに敏感なのかねぇ?が、まんざらでもない様子。試しに顎をつかんでキスをしてみる。当然暴れた。
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