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香さんと「初めまして」を交わした擬人化種は必ず、登録のためにドクトルの検診を受けないといけないと決まっているとはいえ。あぁ嫌だ。
手巻き寿司パーティーで食べたシオン特製の卵焼きに感動したらしい、ドクトル。また食べたいと言っていたので今日はそれを作って、シオンが手に持っている。
が、なるほど、そういうことか。上手くいくとは到底思わないが。
俺を見上げてニッコリ笑うシオンの笑顔が黒い黒い。ドクトルのためにこの前よりも砂糖を多くした甘い卵焼きをブラブラさせ、シオンはその建物に目を向ける。
あぁ、着いてしまった。山奥にある研究施設。人間の目につきにくいよう薄暗い場所に建てられていて、正面玄関で立っている奴の姿が見えづらい。
というか、待ち伏せかよ。嬉しそうに手をブンブン降って大歓迎。あぁもう、今すぐ引き返したい。
「ようこそ、かも。あ、それってもしかして卵焼き?吾輩にくれる、かも?嬉しいなぁ!じゃあさっそく、いただきまぁー……あれ?」
「終わったら、お礼に渡しますね。悠一に持たせるので、もしも俺に何かしようものなら悠一に残らず食ってもらうんで。じゃあ、今日はよろしくお願いしまっす」
「え、えぇぇぇぇぇぇぇーーっ!?そんなぁ、酷い、かも。うん、よろしく」
挨拶代わりに上から下まで舐めるように見やがって、シオンが震えた。そしてその手に握られた、甘い匂いのする袋に目が釘付け。
手を伸ばそうとして、シオンにその手をパァンッ!と叩かれた。いい音だ、もっとやれ。あぁだめだ、ドクトルはマゾだった。
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