初めての

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 黒衣をひるがえして、パタパタと走って行ったドクトルが奥の部屋に消えるのを見ていると。チョンチョンと服の袖を引っ張られた。  人間の検診もパスしていたらしいし、そこからか。書き方を教えて、わからないと言っていたのは家族の現在の様子のこと。  シオンは元は野良猫。両親と兄弟がいたらしいが、離れ離れになってからは再会することもない。野良猫のままか、もしかしたらシオンのように擬人化種になっているのか。 「不明って書いておけばいいでしょ。ん、年齢は?たしか19でしょ?」 「んー、今日の年齢でいいんだよな?俺、明日で20歳になるんだけど」 「………………はっ!!?」 「言わなかったか?俺、明日が誕生日。明日で大人。子供卒業。いえーい」  いやいやいやいや、聞いてないって!そんな、いきなり明日が誕生日で、しかも20歳!!せめてあと3日前に教えてくれよ。  プレゼントも何も用意してないじゃんか。とりあえず年齢の欄には“19”と書かせて。あー、20歳になるんだから軽い酒でも用意してやるか?タバコは嫌いだって言ってたしな。  どっか、ちょっと高めの店でディナーとか?いや、女じゃないんだからそれはいいか。やっぱり家で、何かプレゼントを用意して…… 「お待たせー、ちゃんと書けた……って、うわっ!?ネコヤンが怖い呪詛吐いてる、かも」 「俺、明日が20歳の誕生日だって言ったらこうなった。はい、書けるところは全部書いたんで」
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