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というか今のシオン、しゃべり方といいどこかの誰かさんを彷彿とさせる。シオンとドクトルの距離が近すぎてヒヤッとするんだけどさ。
次をと急かすシオンに負けたドクトル。紙カップにフタをして検査室に置いてくると、次の部屋に足を進める。
紫色の目に涙を浮かべて「グズグズ」言いながら奥の部屋へと案内するドクトルのかわいそうな背中を眺めながら、俺はシオンに声をかけた。
「お前、強いね?でももう無茶はやめなよ?自棄を起こしたドクトルがいつ牙を剥くとも限らないんだからさ」
伸ばしていた爪を元に戻して、シオンが俺を見上げる。キョトンとしているが、コテンと首をかしげたのが可愛くて頬を撫でる。
「緋桜さんに教えてもらった。先手必勝だって。手を出される前に決定的な一撃を決めておけば、警戒するからって」
……よし。今度、緋桜にウインダーインゼリーを10個くらい差し入れしよう。
どうりで似てると思ったんだ。そうか、緋桜の差し金だったか。どうせ、手巻き寿司パーティーの時だろうな。シオンは緋桜をやたら見ていたし。
これぞ社会人。これぞできる秘書。みたいな緋桜を尊敬のまなざしで見つめていたシオン。嫉妬に燃えていた俺の気も知らないでさ。
緋桜は俺よりも若いし、背が高くて細身でイケメンで。俺から見ても格好いい。シオンは、あんなやつが良かったのか?
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