初めての

9/16
前へ
/811ページ
次へ
 チリッと胸が痛んだ。あぁだめだ。シオンが俺よりも緋桜を選ぶわけがないのに。でも、もしも、と悪い方に考えてしまう。  俺はオジサン、シオンよりも16歳も年上だしな。ヘタレだしな。すごい方向音痴だしな。  ズキンズキンと痛む。何でこんな時に。シオンは俺以外の誰も愛さない、俺だけを愛して俺からの愛しか受け取らない。そう信じているのに。 「えっ?ゆ、悠一?いきなりどうしたんだよ、は、離せって……」 「うん?あぁーーっ!?吾輩の前でイチャイチャするなよーっ!吾輩も混ぜてーっ、ギャッ!!」  何だか急に不安になって、気付いたらシオンを抱きしめていた。突然のことに顔を真っ赤にしてもがくシオン。ごめん。離せない。  きつく、包み込むように両腕に力を込めると、暴れていたシオンがピタッと大人しくなる。  今、どんな顔をしている?心の中がモヤモヤして、シオンの顔が見られない。シオンの顔を自分の胸に押し付け、俺はシオンの可愛い尻を見つめる。  代わりに、シオンの声に足を止め振り返ったクソドクトルがシオンに飛びつこうとして。けれどゆっくり顔を上げた俺と目が合って急ブレーキ。もう遅い。  俺は触れる寸前、引っ掻いた。ドクトルの腕から真っ赤な血が舞う。あぁもうだめだな、我慢ができない。  お前はお断りだ。死ね。俺は今、機嫌が悪い。
/811ページ

最初のコメントを投稿しよう!

319人が本棚に入れています
本棚に追加