名は体を表す

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 なんだ、寒かっただけか。つかんで、俺の首元まで引き上げるとシオンが完全に隠れた。  すぐに「もーっ!」と怒って顔を覗かせる。あぁ、すっごく可愛い。ヒョコッと顔を出した、怒ったシオンが可愛くて反射的にキスをする。 「人間にとっては願いや希望でも、俺達にとっては体を縛る鎖。名前が肉体に与える力は強いんだよ」 「どういうこと?名前によってパワーアップするとか、香さんみたいに特殊能力が使えるとか?」 「う、んー……近いようで遠いなぁ。俺達は元々は動物。その元の動物に近い名前を付けることによって、動物としての本性なんかを忘れないでいられる。鳥類の擬人化種に犬とか猫とかの名前を付けると、空を飛べなくなるらしい」  俺には“猫”がついているので、猫科の習性は忘れていない。高宮の場合は文字が違うが、あと個体差もあるが本性はバッチリ。むしろ鷹が強く残りすぎているような感じ。  逆に店長さんの場合は丸っきり人間の名前。本人もジャガーの姿にはもう何年も変身していないらしく、ほとんど人間そのもの。獰猛なのは、彼女の性格。  俺の甥っ子の名前も人間らしい名前だが、人間の血もわずかに混じっているせいか90パーセントくらい人間。  そんな感じで、擬人化種の名前が肉体に与える影響について、ドクトルと千川原が研究結果を出した。千川原は「気の持ちようだ」とも言っていたな。  シオンは割と最近、擬人化種の仲間入りをしたので擬人化種についてはまだあまり知らない。これからももっと、良いことも悪いことも教えて行こう。
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