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「――って、おーい、聞いてるか?話の途中で上の空なんて、何を考えてるんだ?」
「あ、悪い。香さんとか緋桜さんとか、知り合った擬人化種の人達の名前を思い出してた。色んな人と知り合って、俺の中で人間代表みたいになっちまった直也のことを考えててさ」
「…………それ、俺が嫉妬するってわかってて言ってるのか?ならお前、性格悪いぞ」
ヤバ。俺から言い出したことなのに、いつの間にか悠一の話を完全に聞いてなかった。ほんとごめんって。我に返って謝って、素直に話したら。
悠一の眉間に深いシワが刻まれた。悲しそうで、寂しそうで、奥に怒りもあって。黄色の瞳の奥で嫉妬の炎がゆらめく。
あー、悠一に直也の話は禁句だったな。俺が直也に肩入れするから異常に嫉妬するんだ。
だからほら、ガバッ!と俺の上から覆いかぶさってきて手首を強くつかむ。ギシッ!とベッドが悲鳴を上げて、悠一は俺を睨みつける。
「あの子のことは今でも、この手で殺したいって思ってるんだよ。釈放されてまた会ったら俺は、お前に止められないと手を出すと思う。それくらい憎んでいる。なのにお前にそんなことを言われたら俺は……」
悠一の気持ちはわかるさ。俺だって、悠一が直也に酷いことをされて死の間際まで追い詰められたら怒り狂っている。一生許せない。それでも俺は折れるつもりはない。
俺の手首を握る悠一の手にさらに力が入る。ドクッドクッと手首で脈打つ音がよくわかるくらい締め付けられて、その痛みに声が漏れそうになるが耐える。
耐えて、笑ってやる。
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