冷たい指輪

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 死ぬことは、きっと香さんが許さない。生きる気力もなく死ぬことも許されなくなったら、そうなったら…………戻るか。昔みたいに、研究所に。  擬人化種の未来のために自らの体を差し出し、代わりに衣食住を提供してもらう。楽でいいじゃねぇか。まぁ、それは最後の最後だな。  ゆっくりうつむき、残骸を見る。これじゃあ直也と同じなんじゃないか?同意もなしに無理矢理犯して、痛めつけ恐怖を植え付ける。  そうだ、今の俺は、俺が何よりも憎んでいるあの直也と同じだ。俺が、直也と同じだなんて。 「シオン……。俺達、やっぱり……っ」  もう、だめなのか?直也を受け入れるシオンと、受け入れられない俺。愛し合う恋人同士でも、こうなってしまったら俺はシオンのそばにはいられない。  好きだ。大好きだ。心から愛しているよ。運命ってものを信じてしまうほどに、シオンとの出会いに感謝している。できれば来世でも出会って恋人になりたいくらいに。  シオンのことを愛しているからこそなんだ。シオンが俺を信じてくれているっていうのもわかっている。直也を受け入れるという思いをわかってくれるって、信じてくれている。  それは嬉しいし、もちろんわかってやりたいさ。直也が釈放されたらシオンはすぐに会いに行くだろう。  その時、俺は絶対に隣にいる。また直也に何かされそうになったら俺が助けてくれるって、そう思っているんだろう?そうだけどさ。
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