冷たい指輪

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 待って待って。俺、何をしているんだ?もしかして、指輪を外そうとしている?死ぬまで愛し合い、隣にいると誓い合ったのに?  嫌、だめだ、外すな。外したくない。そう思っても、俺の右手は言うことを聞かずにゆっくりゆっくり指輪を指先の方へと導いていく。  あぁもう第一関節だ。あと少しで、完全に抜けてしまう。焦っているのに、どうして?  俺の心は、バクバク早鐘を打ってうるさいのに。なのに、どうしてこんなにも冷たいんだ?  俺の目は、左手の薬指から解放されようとしている指輪を凝視していて、その視線もきっと冷たいんだろうな。けれど、頬を流れる滴は熱い。  頬から顎、顎からポタッと手の甲に落ちた涙は。すぐに冷たくなって、またすぐに熱い滴が落ちる。  ポタッポタッ、ポタッ。バクバクバクバクッ。指にすら触れていない、爪にまで差し掛かった銀の指輪。俺は、ここが大学だということも忘れて発狂した。 「あ……あ、っ、くっ……はっはっはっはっはっ、はぁっ、あぁ、あぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!」  ギュッと目を閉じた瞬間、ケータイが鳴り響いた。俺の発狂にも負けないほど良く聞こえた、着信音。  ビックゥゥゥッ!!荒い息を何度も吐き、ポケットの中のケータイを取り出して見つめる。手が震える。画面が、よく見えない。  こんな時に誰だよ?とりあえず、シオンじゃない。シオンは特別、着信音が違うからな。なら、もしかして校長?俺の発狂を聞いて?
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