冷たい指輪

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 結構歩いたと思う。もう十分離れたからってわけじゃないけどさ、また足が止まって。今度は首だけ後ろに向けた。  あ。なんだ、全然見えねぇじゃん。よかった。けど。校舎の一部しか見えない場所で、ちょっと首を伸ばす。  3歩くらい戻って、ちょっとだけ後ろ脚で立ってみたら。ちょうど保健室の窓が見えた。悠一が、カーテンを閉めた瞬間だった。  ズキンッ!鋭利な刃物で斬りつけられたみたいに心が痛んで、前足が降りる。  真っ赤に熱された刃物を押し当てられて、熱く焼けるみたいに痛い。深く斬りつけられて、血がドロドロ流れ出ている感じがする。  こうべが垂れる。カーテンを閉められたあの一瞬が何度も、しかもなぜかスローモーションで再生される俺の頭の中。繰り返されるたびに、心から血が吹き出す。そんな気がした。  シャッ!とカーテンを閉めた時の悠一、無表情だった。俺に、あんなことをしておいて。キッチリ戸締りをしてカーテンまで。俺を、戻ってこさせないためかよ。  ズキズキズキッ。鋭いトゲがいくつもついたイバラが俺の心を、強く抱きしめているみたいだ。  立ち止まらなかったらよかった。覗き込まなきゃよかった。あんな、あからさまな拒絶。悠一は本当に、俺を嫌いになったのか? 「ッ、ニャ……ニャー……」  いやだ。そんなの、嫌だ。俺は悠一に何をされてもずっと好きだからな。嫌いになんかならない、嫌いになんかなれないんだ。
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