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欲しい。悠一が欲しい。悠一の匂いと温もりに抱きしめられながら……って、なんか、違う意味で体が火照ってきた?
あぁ、ヤバい。抱え込んだ足を開いたら、ものすごく情けねぇ惨状な気がする。ジンジンするし。うぅ。
足は閉じたまま、顔を上げて手を擦る。体が火照っても指先が冷たい。ハエのように擦っていたら爪が引っかかった、左手の薬指。
銀色に光る、悠一とおそろいの幸せの証。俺と悠一がツガイである証。そっと撫でれば、自然と顔がほころぶ。あんな酷いことをされても、俺は悠一が大好きだから。
愛している。絶対外さねぇから。悠一が俺のことを「嫌い」って言って指輪を外しても、俺は絶対に外さねぇ。死守する。
左手を持ち上げ、眺める。綺麗な指輪。口元に持って行って、チュッと口づける。
悠一はさ、どんな気持ちで、何を考えながらこの指輪を選んだんだろうな?俺だったら、緊張しすぎて店員の話なんて全く耳に入らない。悠一のことばっかり考えちまう。
悠一も、そうだったらいいな。この喧嘩が終わったら、聞いてみたい。
その指輪を左手ごと右手で包み込むようにして、胸に抱きしめる。ギュッと、強く強く抱きしめる。それが、男子便所の洋式便器の上。
素っ裸の男が、1人寂しく左手を抱きしめて縮こまっているなんて。何も知らない人から見ればそんなもの。
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