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だからこそ、もっとずっと一緒にいたかった。ずっとずっと、愛してほしかった。
ズキンッ。
嫌いじゃない。好きだ、大好きだ。愛してる。だから。嫌わないで。好きでいて、愛して。俺から、目を離さないで。
「…………ニャー……」
あーあ、もう諦めてんだな俺。涙まで出てきた。ズルズル、重たい体を引きずって墓標の足元へ。
ばっちゃん。俺、少しの間でも幸せになれたよ。ばっちゃんに拾われて、育ててくれて、大学に行かせてくれたおかげだ。
人間の世界、人間のことも知れた。ユキという名の白猫として、シオンという名の人間として暮らして、たくさんのことを学んだ。
それから擬人化種の仲間にも出会って、俺は1人じゃねぇんだって。また新しい世界が見えたんだ。
白猫、人間、擬人化種としてこれからもっと、知らねぇことを知っていこうって時だったのにさ。悔しいぜ。ほんと、悔しい。
悠一なら、1日くらい頭を冷やすために使ってもすぐに探しに来てくれるって、信じてたのに。悔しい。
死んだ人に言うのもなんだけどさ、見守ってくれてありがとう、ばっちゃん。なんて、遺書かよ。
遺書チックなことも言いたくなるぜ。だってもう、手足の感覚もなくなっててさ。すっごく眠い。ここまでか。人間の言葉にならない声で悠一の名前を呼んで、俺は目を閉じた。
あばよ、大好きな悠一。もしも他の人を好きになったら、今度は目を離すんじゃねぇぞ。
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