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――ん?んん?あれ、俺…………もしかして、死んでねぇ?
目を閉じて、確かにあの後は意識を手放したのに。また、戻ってきた。体はまだだるくて動けねぇけど、何だか、温かい気がする。
それに、匂いも違う。湿っぽいような墓地の匂いじゃなくて、何だろう。ほのかにせっけんの匂いがするような。
開け、俺のまぶたっ!グググッ。念じなくても、すんなり開いた俺のまぶた。まず見えたのは、真っ赤。
血っ!?いや待て、鉄の匂いがしねぇし、モッフモフ。これは……毛布か?というか、墓地じゃねぇ。どこだ、ここ?俺、ついに幽体離脱でもしてあったかい家に来ちまったのか?
いやいや、誰の家だよ。というか、体のだるさと痛みと温かさを感じるんなら幽体離脱もしてねぇだろう。
なんて、自分でボケて自分にツッコミを入れていたら。ドアが開いた音がしてパタパタと、足音が近づいてきた。
「――あぁ、うるさい、わかっている。お前、俺を誰だと思っている?もうとっくに終わってそっちに送ったぞ。それから、1週間くらいは来るな。大事な、仕事の客が来ている。あぁそうだ。じゃあな」
ぶっきらぼうな、男の声。誰かと電話でもしてんのか、声がだんだん近づいてくる。
俺様気質などこかの誰かさんを思い出すような、偉そうな感じ。通話が終わると「チッ」と舌打ちをして、男の姿が見えた。
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