2人目

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「お前、あの墓の人の飼い猫だったのか?あんなところで死んだら、掃除に来てくれる墓地の管理者のいい迷惑だぞ。つっても、猫にはわからねぇか。わからねぇから、あんなところにいたんだもんな」  おい、なかなかに失礼な奴だな。バカにすんなよ。  というか墓地を掃除する管理者を気にするのかよ。こいつ、変な奴だ。まぁ、たしかにあんなところで死んだら、死んだ俺の死骸を見つけた管理者の嫌そうな顔が目に浮かぶぜ。 「ニャー」 「ん?なんだ、怒ったのか?だってそうじゃないか。ま、死に場所を飼い主の墓に選ぶくらい、お前は飼い主のことが大好きだったってことだよな」 「ニャー」  そうだよ。ばっちゃんは誰よりも優しいんだ。そりゃあ、俺が粗相をしてしまったらしっかり怒ってくれたけどさ、俺にとっては最愛の飼い主様だった。 「よかったな、愛情込めて育ててもらって。俺とは大違いだ」  男の指が俺の顎の下を撫でるのをやめ、暗い顔をうつむかせる。ふーん。あんまり、いい家庭じゃなかったみてぇだな?  家の中を見渡した感じ、賃貸ではない一戸建て。平屋か2階建てかはわからねぇけど、広い。  俺達が今いるリビングでも3世帯の家族住まいレベル。ということは両親は共働きでほとんど家にいない、目を向けられなくて孤独ってところか。  ただの推測だけどな。だが、それにしては。違和感が。
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