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「はぁ。俺、なんでこんな死にかけの猫なんか拾ってきちまったんだろうな。学校も仕事も忙しいのに。養う金ならいくらでもあるが……」
首が動くようになって周りを眺めていると、そんな溜め息が聞こえた。今、何て言った?
学校と仕事?金がある?こいつ、社会人なのか?けど学校って。親が金持ちの、息子がボンボン?よく見れば、遠くに見えるキッチンの調理器具が高いやつだ。ケタ変わるくらいの。
こいつ、何者?
「ま、気分転換だと思えばいいか。そうだ。食欲はあるか?子猫……じゃないと思うけどさ、ドロドロのパウチを買ってきたんだ」
ケッ。って唾を吐いてやろうと思っていたら。そう言って男が立ち上がりスーパーの袋と小皿を用意してきた。
ガザゴゾ。全国共通、有名なメーカーのネコ用パウチ。それを小皿にニュルッと絞り出して、俺の目の前に差し出す。
えぇー、チュルチュルの方がいいんだけど。バイトでも最近はそれ、あんまり食ってねぇし。不味いし。
せめて温かいミルクとか?お湯でふやかした鰹節とか水煮の魚とかでもいいぜ?なんて。俺が擬人化種だなんて知らないこいつにはわからねぇか。
「ん?やっぱりまだ自力では食えないか。なら、こうしたら食えるか?心配すんな、毒なんか入ってないからな。ほら、早く食え」
クンクン匂いを嗅いでいると、テーブルに頬杖をついてその様子を見ていた男が溜め息を吐いた。
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