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小皿の中のドロドロを指ですくい、俺の口元に持ってくる。えっ?身じろぐと、さらに押し付けてきて、ペチャッと鼻についた。
おい、やめろよっ!鼻、鼻、鼻あぁぁっ!!穴の中にまで入ったぜ!もーっ!猫の気持ちも知らないでそんなことをするよなぁ。
舌で舐めても、鼻の穴に入ったやつまでは取れないんだからな。フンッ!鼻息で、男の手に噴射してやったぜ。ざまぁみろ。
「今のくしゃみか?寒いのか?ほら、その毛布は俺のファンからのもらいもんだから汚しても構わない。どうせ、捨てるしな。それより。ちゃんと食って体力つけないと、マジで死んじまうぞ」
「ニ、ニャー……」
ムカついて睨んでも、男には効果ナシ。今の鼻息噴射をくしゃみだと思った男は、もう片方の手で赤い毛布をつかむと俺の首元まで引っ張り上げてくれた。
あったかい。
なおもドロドロがついた指を押し付けてくるので、ペロッと舐める。仕方ねぇな。こいつが何を企んでいるのかわからねぇけど、今は大人しく言うことを聞いてやる。
人間の若い男。こいつ、ばっちゃんと直也の次に俺に長く関わってきそうだな。なんとなく、そんな気がする。
だって、変な奴だし。色々と。まだ具合が悪くて体が思うように動かせないのは事実。タダでもらえるなら、あんたにだって飼われてやるよ。
どうせ、悠一はもう迎えに来ない。
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