320人が本棚に入れています
本棚に追加
見れば、匂いを嗅げばわかる。こいつ、絶対に料理を普段から作ってるってな。だって、作りながら片付けも合間にしてたんだ。
「危ないから、降りて降りて。元気になったのはいいけどさ、俺は今から飯を食うの。お前は食べられないやつだから、大人しく待ってろ」
「ニャー」
はいはい、わかってますよ。驚かせちまって悪かったな。「ニャー」しか言えねぇけど謝って、流し台から降りると男がネギチャーハンと餃子セットをおぼんに乗せてリビングへ。
俺もその後ろをぴったりついて行く。トコトコ。大丈夫だって、いきなり飛びついたりしねぇから気にすんな。
真っ赤な毛布が乗っているテーブルの前まで来て足を止め、おぼんをゆっくり下ろして、チラッと俺を見た。
はいはい、手出ししねぇから。ゆっくり食え。毛布を咥えて、んんーっ…………よいしょっ……と。男とは反対のテーブルの隅に引っ張るとその中で丸まる。
ジィーッ。いい匂い。ちょっと、よだれが垂れそうなほどに美味そう。いや、美味いんだろう絶対。はぁ、食いたい。
「お前、変な奴だな。まるで俺の言葉がわかるみたいだ。……そのまま待ってろ。お前の分も用意してやるから。いいか、これにはお前が食べられない玉ねぎとかが入ってるんだからな。食ったら死ぬぞ?」
瞬きも忘れるほどに凝視。座ったもののなぜか食べ始めようとしなかった男は、俺の鼻先に人差し指を突きつけてそう言うとおもむろに立ち上がってキッチンへ。
最初のコメントを投稿しよう!