2人目

11/16
前へ
/811ページ
次へ
 食って寝ただけ、運動もしてねぇからそんなに腹は減ってないが。男は、スーパーの袋からあのドロドロのパウチ……じゃない、1本のチュルチュルを小皿に出した。  それなら食う!しかも俺が大好きな味!あ、待てよ。もしかして他にもあるのか?  男はさらに袋の中から箱を取り出すと、少し考えたのち開封。カラカラカラと乾いた音を立てて、茶色い粒が小皿に追加。  その小皿を持ってきて、立ち止まる。 「お前、躾けられているのか?いや、でも猫に躾けって。やっぱり言葉がわかるのか。単に興味がなかっただけか…………まぁいい。大人しく待っててくれたご褒美だ。カリカリは、まだ食えないか?」  俺がずっと毛布の中で待ってたのがそんなに不思議か?猫は犬と違ってそんなに粗相はしねぇぞ?  犬と猫を比べたら、猫はスンとしていて気品がある高貴な感じ。けど犬はどんなやつにでも尻尾を振って飛びついて、好奇心旺盛な感じ。俺の勝手なイメージ。  座って、俺の目の前に小皿を置く男。今朝はドロドロパウチだったのに、もう固いカリカリにしても大丈夫だろうかと。そう心配してくれるのは優しいな。  チュルチュルとカリカリの間はくっついているから、汁が染みていい感じにカリカリがふやけてそうだな。  前足で小皿を引き寄せ、真っ赤な毛布の中で首を伸ばす。ペロッと、ふやけたカリカリをすくい取って噛んでみると。  やっぱり、カリッとはいわずフニャッ。というのも、中にクリームが入っているカリカリだった。
/811ページ

最初のコメントを投稿しよう!

320人が本棚に入れています
本棚に追加