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立ち上がり、テーブルから降りる。男が手を止めて「どうした?」と、目で追うが気にしねぇ。俺はスタスタと床の上を歩くと、ジャンプ。
「おわっ!?お、お前っ……どうしたんだよ、急に。う。あったか……」
「ニャー」
気にするな。ただ、膝の上で寝るだけだ。湯たんぽだと思って温まりながら食ってろ。食い終わったら退いてやるから。
男の膝の上に乗った。まぁあれだ、バイト感覚で。この男はユキの客だな。ほら、俺って人見知りしねぇから。
何?見えないけど感じるって?だぁかぁらぁ、湯たんぽだって!湯たんぽを気にして急いで食べようなんて思わねぇだろ?
「湯たんぽのつもりかよ。…………俺、さ。動物の言葉というか、何を訴えかけているのかが何となくわかるんだよ。もしかして今、俺にゆっくり食えって言おうとしたのか?」
一旦は止めていた手を、また動かしながら男は呟いた。思わず目を開けて上を向く。驚いたな。
人間の中にはそういう特殊な、生まれ持った力を持っている奴もいるけど。まさかこの男もそうだなんて。信じられねぇ。
信じらんねぇけど、俺の考えを的確に感じ取っているんだよな。猫カフェに来る客のような普通の人間とは違う、じっくり窺うような目で俺を見ていた。
呟いただけで今は見てねぇけど。食べるのに集中して、けど俺が気になるのか足の筋肉がこわばっているのがよくわかる。
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