人間、よろしく

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 ムカつくドヤ顔で押し付けられたその本からは、「オイシイBL18禁です」オーラがにじみ出ている。  表紙がピンク色。主人公らしき受けが全裸で、攻めに手で目隠しをされながら首筋を舐められて。しかもその攻めの目線がこっちを向いていて、不敵に笑っているんだからな。腐女子にはたまらないだろ。  よく見たら受けの足の間から白いコードが見えるし、折り曲げられた足は黒い革の拘束具でガッチリ。  しかも下の帯。“えみやん先生の処女作!大好評で重版が追い付かない!?800万部完売”の文字。うわ、本物の小説家だ。プロだ。  押し返しても、俺のズボンの中に突っ込まれてしまって。なぜそんなところに!?1発殴ってやったら。 「これからは俺は俺の好きなように生きる、そう決めたんだ。俺がどう生きて死ぬかは、俺が決める」  と、声のトーンを落として洗濯物を畳み始める。なんだ?胸の奥が、チクッと痛んだ。急に空気が重苦しくなって、笑也の顔から笑みが消える。  高台寺笑也。17歳の人間。高校生でありながらプロの小説家、引きこもり。おじいさんが擬人化種。動物の言葉がわかる、俺達擬人化種に理解があると思われる。  どこか、直也に似たものを感じる。きっと直也も、道を間違わなければこんな風に俺に抱きしめられていた。 「助けてくれ」
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