天才小説家、高台寺笑也

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 笑也はパソコンと向き合って俺には背を向けているから、少し体をずらして覗いてみたら。カチャッと開いて見えたその中身は小さい長方形が6つ。  ゆ、USBメモリ。赤、青、緑、紫、黒、銀のUSBが綺麗にそれぞれの枠にはまっていて、その中から選ばれた銀のUSBがパソコンに挿入……じゃなかった、差し込まれた。  17歳でUSBを6つなんて、いくら売れっ子小説家だからって有り得ねぇだろ。でも、使いこなしているんだよな、きっと。  カチカチ、カチッと慣れた手つきで画面に映し出されたのは何枚もの写真。オシャレなカップのコーヒーとサンドイッチのセット。無造作に散らばった本と転がったリンゴ。それから桜並木、マイナスイオンを感じそうな森林。  かと思えば銀のUSBを抜いて、今度は紫のUSBを挿、差し込む。こっちはイラスト?  線が細く綺麗な、様々な青年の立ち絵がいくつも映し出される。えみやん先生専属の絵師か?うわわっ!い、今チラッと、若い男2人がキスしてるのが見えたんだけどっ!  顔面爆発。バッ!と顔を背けて熱い顔を手で扇いでいると、「はぁ」と溜め息が聞こえた。再び顔を上げると、今度は文章?  見れば、USBの色は赤。なるほど、バッチリ使い分けているんだな。あぁ、すげぇ文字の羅列。これがプロの小説家かよ。  画面を睨みつける目は真剣そのもの。すげぇな、まだ17歳なのに。って、わずかに見える笑也の表情に見入っていたら。
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