天才小説家、高台寺笑也

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 最初はちょっとフラフラしたけど。自転車をこいでいたら安定して、慣れてきた。安全運転で、けれど飛ばし気味でこいでいく。  ビュウビュウ耳元で風が鳴る。俺達の家からはだいぶ離れているっぽい、見たことのない景色を。俺は、出会って間もない人間を後ろに乗せて自転車をこぐ。  熱くも寒くもない、ちょうどいい風が気持ちいいな。おでこ丸見え。悠一がよく、チュってキスしてくれる額。キスをしたら「やっぱり猫の額って狭いんだな?」って笑うんだ。  あーほらほら、あんたの大好きな俺のおでこがキスを待ってるぜ?探すの面倒だから、そっちから来いよ。なんてアホなことを考えてみたり。  え、俺の髪が顔にかかってくすぐったい?知るか。俺の心臓のバクバクが伝わらないように、急ぐ。  背中に感じるバクバクは、久々の外出と俺の運転への不安のせいだよな?まさか………………市役所に行くのが怖いとか情けねぇこと、言わねぇよな?
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