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あぁそうだな、俺は先生のことが好きなんだと思う。すでに彼女がいるが、奪ってまで先生と両想いになろうなんて思わない。
伝えるだけでいい。今までの感謝の気持ちと謝罪、この胸の中で生まれた先生への熱い想いを。勝手に好きでいたい。
先生からいい匂いがしたのも、保健室で俺がおかしな行動をとってしまったのも。たぶん、俺が先生に惹かれていて、フェロモン的な独特の匂いに敏感になっていたからなんだろう。
ばっちゃんに話して、諭されて気付いた本当の気持ち。大事にするよ。
それからばっちゃんは「ごめんねぇ、少し疲れてしまったよ」と、目を閉じた。ずっと上げっぱなしだったベッドの背中部分を下ろして、布団をかぶせる。
少し苦しそう。たくさんしゃべったし、ガッチリ抱き着いちまったし、無理をさせちまったな。
俺はばっちゃんの手を握って「痛みがなくなりますように」と祈ると静かに、物音を立てないよう病室を出た。体が軽い。
かなり長い間いたんだな。空はもうオレンジ色で、ヒンヤリと過ごしやすい気温になった。
自転車にまたがり、病院を見上げる。ここからじゃあばっちゃんの病室は見えない。けど、きっと聞こえるだろ?
「ありがとう、ばっちゃん」
俺はまた病院に背を向けると自転車をこぎ出した。
あぁ。なんで俺、先生の連絡先を交換しなかったんだろ。
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