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控室に入りカギをかけると、すかさず先生が俺に手を伸ばす。サッと店長が身を引いた。
「待って。この子とどういったご関係なんですか?見てわかるように、この子はとても疲れていて体調が悪いんです。どうするつもりなんですか?」
「ただの客。そしてシオンが通う大学の保健室の先生。そして…………この子から、理性を失いそうなほどの甘い匂いを感じる。この意味が分からない君じゃあないでしょ?」
瞬間、店長が目を見開いた。穏やかに微笑む先生に信じられないといった様子で、俺に「本当なの?」と聞いてくる。
というか今、甘い匂いって言った?それって、俺が先生に感じるあの匂いみたいなやつのことか?俺が先生のことが好きだから、独特な匂いを感じるあれ。
店長が俺と先生とを交互に見つめ、難しい顔をする。先生の言い方も変だったし、店長はあの甘い匂いのこと、何か知ってんのか?
「本当だぜ、店長先輩。色々と助けてもらったし助けてもやったけど、わけあって俺のせいで未来を失ったんだ」
俺は、シオンに戻った。もうバレちまってるんだし、今さら隠す気もない。
面倒な言い方ですんません。でも聞かねぇ方がいいですよ。聞いたらきっと、正義感の強い店長なら直也の喉を噛み砕きに行く。これ、確定。
「未来を失ったって、クビと免許のはく奪と追放のことか?それなら別に問題ないから気にすることはないよ。それよりも俺は、シオンに知ってほしいことがあるんだ」
先生が1歩下がって目を閉じる。静かに息を吸い、吐く。すると空気がざわめきだした。
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