第三章 スライム 再戦

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半径数十メートルに及ぶ影が勇者と自分のまわりを囲んだ。そして、押し付けられるような風が何度にも渡って吹き付けてくる。全身が赤い羽に覆われた大きな鳥が真上を飛んでいた。 「あれは自然に存在する動物か?」  恐る恐る、指を鳥に向ける勇者に現実を告げなければならない。残酷な現実を。 「いいえ。額に角があるのでモンスターです。しかも、ボスクラスのモンスターで、ゴクラクチョウと言います。三種類いて羽の色で攻撃が分かれます。青だと氷系の攻撃を、黄色だと真空系の攻撃をしてきます」 「あれは赤い色をしているが、どうなんだ」  ずっとゴクラクチョウから視線を離せずにいる勇者。 「赤い羽は炎系の攻撃でゴクラクチョウ三種類の中で最強と呼ばれています」 「戦うのか? あれと……」  言葉を失う勇者。 「でも、このエリアにあんな強いモンスターはいません。出現するのはもっと先で、出現するとしたら他のモンスターが呼び出さない限り………」  ばっと後ろを振り向いた。スライムは、ゴクラクチョウに合図をするように体をぴょんぴょんと弾ませている。 「あのスライムが仲間を呼んだのか!?」  勇者も同じ答えにたどり着いたらしい。  まさか、昨日、勇者がこのスライムに強い仲間がと言っていたが本当にいたとは…………。 「あのモンスターと今戦って勝つのは不可能です。逃げ……」  られなかった。勇者に戦闘になっても逃げられない呪文をかけていたんだった。 なぜ、あんな呪文をかけたと数分前の自分を呪う。   戦うしかないのか?  もう一度、ゴクラクチョウを見上げる。 ゴクラクチョウは吸い込んだ息を一気に吐き出す。口から火炎放射の何百倍も強い炎を吐き出した。かなり上空で吐き出されているが耳元で大声を出されているかど思う程の轟音と肌がヒリヒリする暑さと髪の燃える匂いがわずか数秒で鼻に届いた。この場所が火炎地獄に変わった瞬間だった。 一分後、さっきまでのどかな緑の草原があったとは思わせないくらい、背後に目に見える範囲全てが真っ黒な水墨画のような世界に変わっていた。
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