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「……あ…れ?」
勇者が剣を振り下ろしたままスライムがいた地面を見ている。
「どうしたんですか?」
近寄って勇者の足元を見て、驚きと失望と疑問が頭に同時に浮かんだ。
スライムは生きていた。剣を振り下ろすまでの時間がかなりあったので移動したのだろう。だが、全くの無事という訳ではない。剣は当たっている。スライムの右上。人間なら右肩あたりだろうか、そこにうっすら一筋の傷が付いている。HPが1ポイント減ったくらいのダメージだ。
「勇者様。もう一度です」
何をどうすれば、この至近距離で攻撃を外せるんですかと怒りたいのを堪えて言った。
「わかった」
もう一回高く剣を振り上げる勇者。もう一度攻撃をしようとするが、スライムの行動が早かった。
「何っ!?」
スライムは、勇者が剣を掲げ、しっかりと顔が見える状態になったところを狙って顔をめがけて体当たりをしてきた。
「うっくっ苦し…い」
スライムは勇者の顔にしっかりと張り付き、振り落とされないようにしがみついている。まさかの攻撃に助けに行くのが遅れた。スライムは勇者の鼻と口をふさぐように張り付いて息をできないようにしている。勇者は剣を放してスライムをはがそうと掴むがなかなかはがれない。だんだん息が苦しくなってきているらしく頭を激しく動かす勇者。スライムも殺されないように必死でしがみついているのだろう、なかなかはがれない。
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