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「うわ!」
勇者はやっとのことでスライムを顔からはがすとそのまま遠くへと投げてしまった。
「大丈夫ですか?」
勇者に駆け寄り顔を見ると青ざめている。
「死ぬかと思った」
ぜーぜーと荒い息をする勇者。
「スライムと戦って死んだ人間なんて聞いたことがありません」
呆れながら言うと「そうか? あんなに強いスライムなかなかいないだろう。きっと周りに強い友達がいるんだろう」
まるであのスライムが少年漫画の主人公で強いライバルと戦いながら強くなり、ライバルと友だちになっているかのようにいう勇者。
「そんなはずないですよ」
自分が弱いとか、意気地がないとか考えないところがすごいなと思いながらも、この勇者の性格を考えると何を言っても無駄だと、小さくため息をついた。
「では、次こそ退治しましょう」
「おう。次こそな」
そういって剣を拾うと高く掲げた。
旅に出てから今日で三日目。出発してから、スライムを含め何十匹とモンスターにエンカウントするが、いまだに一匹もモンスターを倒せていない。
自分は魔導士としてレベルは高いが、この勇者の付き人として一緒に旅をしながら一人前にしなくてはいけないのかと思うと胃腸薬が手放せないと確信した。
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