第二章 キャンプ 夜

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「クマはかわいそうと思わないんですか?」 「あぁ。全く」  速攻で否定する勇者。今まで弱いから退治できないと思っていたのだが、本当はかわいそうと思ってできていなかったなんて、今までの苦労は何だったんだ。怒りと呆れた感情が胸に渦巻く。この気持ちをどう表現しよう? 「そうだ。こいつの肝を取ろう。疲れを取るために連れて来たんだし」  思い出したように勇者は言ってクマの肝を取ろうとする。 「いいえ。そのクマの肝を食べても私の疲れは取れません?」 「そうなのか? そんなに疲れがひどかったのか?」 「はい」 「では、どうすれば疲れが取れる?」 「そうですね。この気持ちを受け止めてくれさえすればきっと疲れもとれるでしょう」 「気持ちって……どうした? 何か、すごい怖い顔しているぞ」  さすがの勇者も、私の顔をみて青ざめた。今まで見たこともないほど怒りに満ちか表情を向けられてまずいことをしたとやっと気づいたらしい。 「話せば、わかる。話せば」 「よく聞くセリフですね。でも、その言葉を言って本当に話し合いで解決したことって、世間一般でありますか?」 「……ないかも……」 「では、覚悟はいいですね」  杖を構える。 「……いや…よくない……かな」     
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