第2章 重なる

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第2章 重なる

花火が始まった。 「わたし、こんなに近くで花火見るの初めてー!」 わたしはすごく興奮していた。奏太はまた優しい目でわたしのことを見ていた。 ふと、奏太を見るとドキッとした。 「(なんか…わたし、前にも同じのを見たことある…?)」 花火に照らされた奏太をもう一度見てみた。 あの妙な映像は消えていた。 感情が高ぶっていたからかな?そう思うことにした。 『きれいだね』 「え?あ、花火きれいだよね!」 『うん。花火もそうだけど…。』 奏太はわたしをじっと見つめた。 あ、初めてのキス… わたしは恥ずかしくなって目を瞑った。 ちゅっ わたしの脳裏に2年前の映像がうつった。 そうだ。2年前もこの場所で、奏太と…。こんな大切なことをわたしは忘れていたのか? あぁ、懐かしいな。こんなにかっこよくなって、ほんと反則だよ。 「そうちゃん…」 『お、おまえ…。その呼び方っ…。』 「うん。いま思い出したよ、そうちゃん。今まで忘れててごめんねっ!わたしのこと諦めないでくれてありがとうっ!」 奏太はぎゅっと抱きよせた。 『当たり前だろ。ずっとずっと大好きだったんだからな。』 「うん。ごめんね、辛かったよね。」 『たしかに俺も辛かった。だけど、誰よりも辛いのはお前だろ。だから…』 「だから、わざわざこっちの高校を受けたの?」 『あ、あぁ。お前を支えてやりたくて。そして、もう一度お前に俺のこと好きだって思わせるために。』 「そうだったんだね。無理やりにでも記憶戻させればよかったんじゃないの?」 『いや。あの事故で両親亡くしただろ。思い出させるとか、そんな残酷なこと俺にはできない。』 「そっか。奏太は優しいね。」 『今日、お前が2年前と同じ、お母さんのおさがりだって言ってた浴衣を着て来た時、心臓が止まるかと思った。』 「だから固まってたんだね~。」 『うっせ。』 わたしたちは この奇跡を、幸せを、噛みしめた。 わたしに2回も初めてを経験させてくれた奏太に出会えよかった。 お父さん、お母さん、わたしを生かしてくれてありがとう。2人の分まで幸せに生きていきます。 そう、花火を見つめて 誓った。
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