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「なるほどなぁ。つまり過去の記憶も頼るアテもなくこの森をさまよってた訳だ」
「驚かないのか?」
こっちが驚いてしまう。
「あぁ、この広い世界だ。何が起こっても不思議じゃないさ」
ククルゥは笑いながらそう言い放った。実に逞しい男だ。
「ところでこれの名前は分かるか?」
そう言ってナイフを見せてきた。
「ナイフ…で合っているか?」
「そうだ、次はこれだ」
そういって背負ったリュックを前に出す。
「リュック…いや、カバンか?」
とりあえず思い浮かんだ言葉を伝えた。
「どっちも正解だ!次はこれだ」
そう言って手のひらに炎を浮かべた。道具も使わずに。
「おい!火傷しちまうぞ!それとも手品なのか!?」
俺は心底驚き、叫びながらそう言った。
「ハハハ。心配いらないさ、そして手品というのはハズレだ。魔法だよこれは。俺にはせいぜい火種になる火力しか出せないがな」
笑いながらそういう彼の目には若干の翳りが見えた気がした。
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